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日本ラグビーの新リーグ「NTTジャパンラグビーリーグワン」が、5月29日の決勝戦で1シーズン目の幕を閉じた。決勝では埼玉パナソニックワイルドナイツが東京サントリーサンゴリアスを18—12で下して初代王座を獲得。昨季で閉幕したトップリーグ決勝と同じカードで“連覇”を果たして、新リーグ最強チームを印象づけた。

 

グラウンド内では熱戦、好ゲームが繰り広げられた一方で、開幕前からの1年あまりで2チームが消滅、2チームが強化体制の再編を発表するなど不安材料も露呈する。決勝戦翌日に行われた年間表彰式League One Awardsに参加した、リーグワンの東海林一専務理事が1シーズン目の成果と課題を振り返った。

 

「成果の1つは競技力の強化。そして新しいラグビーの姿を見せることができたと思う。クラブ主体で、ファンと一体になった競技を越えた演出も楽しんでいただけ、リーグ、クラブレベルでパートナーとの共創も出来たと考えている」

 

2003年に発足したトップリーグを、敢えて新リーグへ移行した大きな理由は2つある。日本代表の強化を後押しするための国内リーグの競技力向上と、日本流の企業スポーツのプロ化を進めて、独立性、事業性を高めることだ。強化面を見れば、FBダミアン・マッケンジー(東京サンゴリアス)、FLピーターステフ・・デュトイ(トヨタヴェルブリッツ)ら世界屈指の選手が続々と参入。新リーグでは、同じピッチでプレー出来る機会を重視して、海外代表選手の出場枠を設けることで、日本選手の競技力アップも目指している。選手だけではなく、ロビー・ディンーズ(ワイルドナイツ)、フラン・ルディケ(スピアーズ)という世界クラスのコーチも、チームとリーグの熟成を後押しする。

 

その一方で、プロ化への大きな課題になる集客では来季への宿題を残した。パンデミックによるフルキャパシティの50%、5000人以下などの観客数制限が大きく響いたが、リーグの総観客数は484047人、1試合平均は3227人に止まった。実力、人気とも高い12チームによるディビジョン1でも総観客328617人、1試合平均4213人という数字に、あるチームのマネジメントスタッフは「最低でも1試合で8000人の観客を集めたかったが、厳しい結果だった。従来の親会社に運営費を依存する状況からの脱却には、かなりの時間が必要だと思う」と語っている。現実的には、3、4年という時間でプロチームへと移行できる可能性はないだろう。

 

プロスポーツとして日本で定着するプロ野球(NPB)、サッカーJリーグは、昨季こそ1試合平均でそれぞれ9100人、6661人と苦戦したが、パンデミック前の2019年はJリーグで2万人、NPBは3万人を超えた観客を集めた。ラグビーは野球、サッカーに比べて試合数が少なく、保有選手が多い難しさはあるが、東海林専務理事は「チケット収入以外にも、母体企業からの支援、その他のパートナー企業からのサポートなどを組み合わせた収入構造を作ることが必要だ。リーグ側でもモデルケースをきちんと提示して、それをチームにどう実現してもらうかを一緒に考えていきたい」と訴える。

 

リーグワンには、2019年のW杯日本大会の熱気が冷めないタイミングでの開幕を急いだため、準備不足のままのスタートを余儀なくされた背景がある。リーグ、クラブともに手探りの部分は少なくない。走り出してからのトライアンドエラーを繰り返しながら、来季はさらにステップアップしたリーグ運営、そして課題の観客数アップに挑むことになる。

 

筆者:吉田宏(ラグビージャーナリスト)

 

 

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